管理薬剤師が実践する副業・ダブルワーク
診療(調剤)報酬改定などの影響もあり薬剤師の給与も上がりづらい状況が続いています。そんな中、副業を考えている薬剤師も増えているのではないでしょうか。
実際に、多くの薬剤師が現在「副業」を行っています。
「少しでも収入を増やしたい!」
「空いた時間を有効活用したい。」
「他の仕事も経験したい!」
このように、現在「副業」を始めるか悩んでいる薬剤師も数多く存在しています。
しかし、「そもそも、薬剤師は副業をして良いの?」という疑問が湧いてきますよね。
薬剤師の中には、管理薬剤師や、公務員薬剤師が副業できないと勘違いしている薬剤師もいるため、法的な面からも副業(ダブルワーク)についての正しい知識を身につけましょう。
本記事では薬剤師の副業について解説します。
- 薬剤師の副業の可否について
- 副業・ダブルワーク可能な求人の増加
- 管理薬剤師や公務員薬剤師ができる副業・資産運用
- 副業をする前に知っておくべき注意点
この記事を書いている私は、副業を行い薬剤師3年目で薬剤師と副業の収入で月収120万円以上になりました。その経験を活かし、10年以上前から薬剤師と「副業」について発信しています。このような、副業や資産形成について長年に渡り発信を続けている薬剤師は全国的にも私くらいだと思います。
また、調剤薬局では執行役員や人事採用担当も経験した経験から、薬剤師の「副業」のあり方について解説いたします。
薬剤師の副業の可否について
一般薬剤師については、会社の就業規則で副業が禁止されていない限りは、基本的に副業をしても問題ありません。
では、管理薬剤師や公務員薬剤師の副業についてはどうなのでしょうか?
一般的には、管理薬剤師や公務員薬剤師は副業が禁止されていると言われています。
しかし、それは本当なのでしょうか?
管理薬剤師が副業禁止と言われる根拠
管理薬剤師は、「薬機法 第7条3項」によって薬事に関する兼業が禁止されています。根拠とされる具体的な法律(条文)は次の通りです。
【薬機法7条3項】
薬局の管理者(第一項の規定により薬局を実地に管理する薬局開設者を含む。次条第一項において同じ。)は、その薬局以外の場所で業として薬局の管理その他薬事に関する実務に従事する者であつてはならない。ただし、その薬局の所在地の都道府県知事の許可を受けたときは、この限りでない。
つまり、管理薬剤師は副業自体を禁止されているわけではありません。
薬事に関わらない仕事(薬剤師以外の仕事)である場合は除外されるため、薬機法上では副業は可能となります。
ただし、勤務する薬局以外で薬剤師として働いた場合には違法となるので注意が必要です。
しかし、この場合においても例外として都道府県知事の許可を得た場合には除外されるため、夜間休日診療所などでの勤務など場合によっては薬剤師としての兼業も可能となります。
法的に副業が可能だとしても、本業の会社の就業規則で「副業」を禁止している場合もあります。
必ず就業規則を確認するようにしましょう!
公務員薬剤師が副業禁止と言われる根拠
公務員は原則として、以下の国家公務員法・地方公務員法により兼業を禁止されています。
【国家公務員法 第103条】職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
【国家公務員法 第104条】
職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。
【地方公務員法 第38条】職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない
これらは、薬剤師に関わらず全ての公務員に共通する規則ですので、「副業」が全てNGだと勘違いされがちです。
しかし、国家公務員法では副業を原則禁止としながらも、第104条にあるように「内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する」とあることから、例外的に許可を受ければ可能な場合があります。
実は、「副業」の定義をしっかり理解すれば公務員薬剤師でも副収入を得ることができます。実際に多くの行政関連の仕事に従事する国家公務員の薬剤師や、保健所に勤務する地方公務員なども副収入を得ることができています。
公務員の副業(副収入)を得る方法については、この後詳しく説明します。
副業・ダブルワーク可能な求人の増加
働き方改革に伴い、副業についての規制緩和が行われました。
厚生労働省が平成30年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成したのをはじめ、モデル就業規則が平成31年3月に改定され、副業に関連して以下の変更点がありました。
- 労働者の遵守事項である「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定が削除
- 「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」という項目が追加
平成30年の副業解禁を受けて、実際に薬剤師の求人サイトでもWワーク可とする求人も多く見受けられるようになりました。
ダブルワーク可の求人例
2020年8月現在、実際に薬剤師の求人サイトでは下記のようなWワーク可能な求人が目に付くようになりました。
単発・短時間のパートや派遣として調剤薬局やドラックストアなどで働く方法があります。
多くは日曜日など週に1回勤務で時給2500円ほどです。仮に週1回4時間働いた場合には、月収が約4万円増える計算となります。
薬剤師としてのWワークを希望する薬剤師の方は、薬剤師の人材紹介会社へ登録することでダブルワーク可の求人情報が確認できます。
【Wワーク可の薬剤師求人を探す】
・マイナビ薬剤師
※ 上記の求人例は薬剤師として働く副業のため、管理薬剤師や公務員の方は行うことができません!
管理薬剤師でも可能な副業
管理薬剤師の場合には、上記のような薬剤師としてのダブルワークを行うことは法律で禁止されています。
そのため、多くの場合薬剤師とは無関係の仕事を副業として行うことになります。
管理薬剤師が行う副業(例)
管理薬剤師が行える副業として主なものは次のものになります。在宅ワークで行えるものが多くあります。
- ブログ運営による広告収入
- アンケート回答
- メディカルライター
- イラストレーター
- 翻訳
インターネットで行う在宅ワークの代表的なものといえば、クラウドソーシングを利用した仕事の受注があります。
仕事はライティング業務からデザイン作成まで幅広くあり、薬剤師は自分に合った仕事を選びやすくなっています。薬剤師の経験や知識を求めるものから、初めての方でもすぐに出来るものまで難易度も様々です。
有名なクラウドソーシング仕事依頼サイトとしては次の2つがあります。
無料で登録できますので、興味のある方は登録してみると良いでしょう。
管理薬剤師や公務員薬剤師ができる副業・資産運用
公務員でも、給与以外に収入源が欲しいと考えている人は少なくありません。しかし、一般的には公務員の副業は禁止されています。
そこで、公務員が副収入を得る手段として人気が高いものの一つとして、不動産賃貸業(不動産投資)が挙げられます。
実際に、私も行っていますが公務員を含めた多くの医療従事者が行っているのが不動産投資です。忙しい薬剤師の皆さんにとっては堅実な収入源となります。
不動産投資というと「投資」のように感じる方もいますが、金融機関は基本的には投資に対して融資は行いません。あくまで、不動産賃貸業という事業というとらえ方が正しい考え方です。
実は、公務員はその信用力の高さから不動産投資と相性のいい職業だといわれています。そのため、多くの公務員が不動産投資に取り組んでいるのです。
しかし近年、公務員が不動産投資で処分されるというニュースがありました。このことにより、不動産投資があたかも副業規定に抵触したようなイメージを与えたかもしれません。しかし、この場合実際には不動産賃貸業が事業的規模を超えて行ってしまったことが原因です。
公務員の不動産投資(不動産賃貸業)は可能!
国家公務員の副業については、「人事院規則14-8」において詳細が規定されています。
その内容を見ると下記の条件をクリアすれば、国家公務員でも許可なく不動産投資をすることが可能ということが分かります。
- 5棟10室未満
- 年間の家賃収入が500万円未満
国家公務員の場合は、人事院規則で基準が確認できますが、地方公務員の場合は在籍している地方自治体が規定している規則に従って判断することになるります。おおむね、国家公務員の人事院規則に準じているケースが多いですが、若干異なる自治体もあるようですので、地方公務員で不動産投資をする場合は、あらかじめ確認したほうがよいでしょう。
現在、医療従事者向けに不動産投資や節税についてのオンラインセミナーを開催している会社が増えています。
ファイナンシャルプランナーの講師によるお金の知識を学べる人気のセミナーです。興味のある方は是非、この機会に勉強を始めてみましょう!
また、不動産賃貸業(不動産投資)について話を聞きたい方は、コチラで相談も可能です。
バレない副業!副業をする前に知っておくべき注意点
最後に、副業を行う上での注意点をまとめたいと思います。
誰でも副業が認められているわけではない
副業の規制緩和が行われましたが、誰でも副業が解禁されたという意味ではないので注意しなければいけません。
あくまでも就業規則等に「副業の禁止」が規定されていないことが条件です。就業規則にて禁止されているのに勝手に副業をはじめてしまうと、就業規則違反となって処罰の対象となる可能性があります。副業を始める前には必ず本業の就業規則を十分に確認しておくことが重要です。
また、就業規定で「副業禁止」と明記されていなくても、「暗黙の了解」として副業は禁止と考えている職場や経営者も少なくありません。トラブルを防ぐためには、あらかじめ上司に確認しておいた方が安全でしょう。
本業に影響でないことが前提
あくまで副業は、本業に影響が出ない範囲で行いましょう。
現在の給与に満足できないのであれば、副業を行うより転職を行った方が収入アップにつながる可能性があります。
私のように、転職により年収が330万円アップする場合もあります。(詳しくは「薬剤師の年収推移」をご覧ください)
現在の職場や賃金に満足していないのでしたら、副業を考える前に転職も考えてみると良いでしょう。
私は、ファルマスタッフの転職サービスを利用して転職しました。
副業で一定以上の収入があると確定申告が必要
確定申告が必要な「副業」とは、年間20万円を超える所得があった場合です。
そのため、副業による所得があっても20万円以下の人は確定申告をする必要はありません。
副業の収入が年間20万円を超える場合には、注意が必要となります。
また、副業により大きな収入を得る場合には、住民税が増えることにより会社にバレてしまうこともありますので、その辺をしっかり理解したうえで取り組むようにしましょう。