薬学部を留年した学生のその後【留年経験のある先輩薬剤師の今】

2020.10.26更新

薬学部に入学したのは良いけど、留年してしまいそうで不安になっている薬学生も多いと思います。
私も留年が決まった時、大学を辞めるべきか真剣に悩みました。また、留年が将来の就職やキャリアにどのような影響を及ぼすか心配になったことを覚えています。では、実際に留年を経験した先輩薬剤師は現在どのような仕事をしているのでしょうか。

 

「薬学部に入学したけど留年しないか心配」
「留年したら就職できるのだろうか・・・」
「留年して退学した方が良いか悩んでいる」
「留年した薬剤師のその後が知りたい」

 

本記事では、このような薬学部の留年について解説します。

 

本記事の内容
  • 留年生のその後と就職について
  • 薬学部を留年した時にやるべきこと
  • 私が留年したら〇〇をする

 

この記事を書いている私は、1浪し薬学部に入学したものの2度の留年を経験しました。

薬剤師としての経験は10年以上で、人事採用も経験し現在は薬剤師のキャリア支援をしています。

>>詳しいプロフィール

 

留年生のその後と就職について

薬学部に入学したはよいけど勉強についていけない薬学生や、バイトやサークル活動に一生懸命になり過ぎて出席日数が足りなくなってしまった薬学生もいるかと思います。分かってはいたけど、いざ「留年」という言葉を目の当たりにすると人生が終わったような気持ちになってしまうものです。私もそうでした・・・。

 

「留年したらどうしよう・・・」
「就職できるかな・・・」

 

などと、不安を抱えているのではないでしょうか。

 

でも、大丈夫です!実際は留年をしたくらいで将来のキャリアが絶たれるといったことはありません。安心してください。
私を含め、留年を経験した多くの先輩薬剤師が社会で活躍しています。

 

薬学部の留年者数

2020年4月現在、薬学部は全国に77校あります。(薬学部のある大学一覧
留年する学生の割合は大学によって違いはありますが、卒業するまでに約30%の学生が留年を経験しています。
大学によっては次のような留年率が分かるデータを公表していますので、留年率を知りたい人は大学のホームページを確認してみると良いと思います。

参考:東邦大学 薬学部

 

2019年に厚生労働省が公表した「薬剤師の需給予測に関する研究報告書」の中では、一度も留年せず薬剤師国家試験までストレートで合格できる学生は、6割にも満たないといわれています。これを多いと考えるか少ないと考えるかは個人差がありますが、全国の薬学生の3分の2は薬剤師になるまでに何らかの形で足踏みをしているのです。

 

留年が就職活動へ与える影響

留年すると、まず考えるのが将来の不安です。
このまま薬剤師になれたとしても、就職活動に影響しないだろうか、希望の職業に就けるだろうか・・・と考えてしまいがちです。
しかし、何度も言いますが、留年をしたくらいで将来のキャリアが絶たれるといったことはありません。実際に、社会で活躍している薬剤師の中にも留年を経験している人は数多くいます。私もその一人です。

 

私は1浪2留をして薬剤師になりましたが、新卒で入社した大手総合スーパー(GMS)のイオンでは留年が問題視されることは全くありませんでした。それよりも薬学生の場合には、薬剤師国家試験に受かるかどうかが重要です。(国家試験に受からなくとも入社できる企業もあります)
薬剤師になってしまえば、病院や調剤薬局、ドラッグストア等で働く上で留年がキャリアに影響するということはないと考えて良いです。
私は調剤薬局で人事採用を担当していましたが、「留年」経験のある薬剤師が面接に来たとしても、全くマイナス評価をすることはありませんでした。それよりも、留年を乗り越え薬剤師国家試験に合格したことの方が評価できるからです。

 

しかし、注意が必要なのは一部の職業では内申を重視する傾向があるということです。
実際に私は、自衛隊幹部候補生(薬剤科)の試験を受けましたが、人事担当の方から「内申が問題なければ大丈夫ですよ」と聞かされました。これは、裏を返せば「内申を重視しているので試験の点数が少々悪くても大丈夫ですよ」ということを意味しているのではないでしょうか。
試験の結果は不合格でした。試験の結果があまりに悪かったのか内申が影響したのかは今となってはわかりませんが、人事の人の話を考えると少なからず内申が影響する企業や職種もあるということです。
しかし、基本的には留年だけで門前払いするような企業はありませんので安心してください。

 

留年を経験した薬剤師の今

留年を経験した薬剤師は、現在どのような仕事をしているのでしょうか。
私は新卒で総合スーパーに入社してから転職もし、調剤薬局の部長執行役員になることができました。同期の薬剤師よりも早く出世をし30代になったころには年収も1000万円以上になりました。これまでの薬剤師経験の中で留年がキャリアに影響したと感じたことは一度もありません。
詳しくは、私の経歴・プロフィールをご覧ください。

 

留年を経験した大学時代の友人も、現在病院の薬剤部長や調剤チェーンのエリアマネージャー、薬局開設者(経営者)など多方面で活躍しています。
私の印象としては、留年を経験した薬剤師の方が社会に出てからの出世のスピードが速い印象さえあります。もしかすると、挫折を経験し逆境に強いからかもしれません。

 

薬学部を留年した時にやるべきこと

留年が決定した場合、落ち込んでいるばかりでは前に進めません。
まずは、原点に立ち返り薬学部に入学した目的や目標を明確にする必要があります。

4年制だった頃の薬学部を6年間かかって卒業しました。

 

まずは退学や休学の検討

留年して再度勉強に励みたいと思っても、家庭の事情などでお金が工面できない場合もあるでしょう。そのような場合には、退学もやむを得ないことでしょう。
しかし、そうでないのであれば後悔しないために退学だけではなく休学も視野に入れることが必要です。
私も学生時代、半年間休学しアルバイト生活をする中で、薬剤師という国家資格の重要性や現在の恵まれている環境について改めて実感することができました。
私にとっては休学という冷却期間がなければ、現在の薬剤師としてのキャリアはなかったと思います。

 

悪循環を回避する

留年することにより親しかった友人達と学年が変わってしまい、一緒に励ましあって勉強できる仲間がいなくなることで成績がより悪化してしまうことがあります。また、留年することで必要な未収得科目の授業(単位)のみしか受けなくなり、いつしか学校に行くモチベーションが低下してしまいます。留年生が陥りやすいのは、学校に行かなくなった分バイトのシフトを入れてしまったり、大学生活以外のところで充実してしまうことです。
この悪循環により、再度留年といったことも起こりえます。留年した分学費や生活費を稼がないといけないという気持ちはわかりますが、アルバイトはほどほどにして、大学生活を優先させるようにする必要があります。

 

友人関係や環境を変える

不思議なことに多くの学生は周囲の環境に影響されます。友人が留年をしてしまうと留年に対するハードルが下がってしまい、自分も留年しても問題ないと思ってしまいがちです。
また、学校の授業を一緒にサボってしまうような友人がいるならば交友関係を改めなければなりません。私は、大学に入り友人との飲み会や麻雀、カラオケなど夜遅くまで遊ぶこともあり次の日に授業を欠席してしまうなど出席日数が足らなくなってしまうことが留年の原因にもなりました。
同じように遊んでいても中には要領が良く留年せずに進学できる人もいます。友人が遊んでいるから大丈夫という安心感は禁物です。留年の原因が周囲の人間関係や環境にあると感じるならば、留年を期に思い切って友人関係や環境を見直してみましょう。

 

定期試験を乗り切る

薬学部の学生の最終目標は薬剤師国家試験に受かることですが、まずは大学卒業を目標にしましょう。定期試験で単位をとれなければ、国家試験の受験資格もありません。定期試験対策が重要となってきます。

 

過去問の入手

試験科目にもよりますが多くの大学では、やはり過去問を用いた試験対策が有効です。
そのため、部活動やサークルに所属し先輩からの過去問をゲットしたり、友人間での情報共有も重要です。留年すると友人からの情報が得づらくなることもありますので、留年後も積極的に新しい仲間を作る努力をするべきでしょう。大学の試験勉強は情報戦といっても過言ではありません。

 

全科目合格を目指さない

薬学部の定期試験は科目数も多く範囲も広い傾向にあります。1カ月前から勉強し始めても全ての教科を完璧に勉強することは並大抵のことではありません。特に留年を経験した人にとって注意したいのは、全科目をまんべんなく頑張ろうとしないということが重要です
真面目すぎる人は、全て合格点を取ろうと考えてしまい、その結果全ての教科が中途半端な結果となってしまいます。完璧主義で要領が悪いと自覚している人は、思い切って捨てる教科を決め再試で合格を目指しましょう
私の場合、留年後は重要な科目を選定し、苦手な教科は試験直前に過去問を確認する程度の勉強しかしませんでした。
その結果、薬理などの重要教科は90点以上の成績を常にとることができ、留年生にもかかわらず教科別の成績優秀者として掲示板に貼り出されたこともあります。

秀:100〜91点、優:90〜81点、良:80〜71点、可:70〜60点

 

国家試験対策

国家試験対策は、なによりも早い段階で試験の問題に慣れることが大事です。そのため、過去問をひたすら繰り返すというのがお勧めです。
私の場合には、国家試験受験の1年前から何度も過去問を繰り返し解いていました。
そのおかげで、留年はしたものの薬剤師国家試験は1度で合格することができました。

 

 

私が留年したら〇〇をする

実際、薬剤師として社会人になった私が、いま学生時代に戻って再度やり直すのであればどのような方法をとるかをお伝えします。現在、留年で悩んでいる人は是非参考にしてみてください。

 

留年が可能かを確認

薬学部の学費は非常に高いため、1年留年するだけで親御さんにかかる負担は大きなものです。
自分は薬剤師になることをあきらめていなくとも、学費が捻出できないのでは退学しかなくなってしまいます。そのため、まずは親に「留年が可能か」を確認します。当然、留年が可能だとしても親に負担を与えることに変わりはないので、必ず進級し卒業をすることを誓いお願いします。

 

未収得科目以外の教科の授業もできるだけ出席する

留年した場合、すでに取得済みの科目(単位)もありますが、基本的には全ての教科の授業を受けるようにします。
これは、進級した後に授業についていけなくならないようにする為と、学校の授業に出席する癖をつけるため、そして留年した後のクラスでの人間関係を構築するためです。

 

目標を卒業と国家試験合格に絞る

退学せずに留年する道を選んだら、「必ず卒業する!」「薬剤師国家試験に合格する!」といった目標をしっかり立てることが重要です。ここが、何となくや自信がなくなってきているようなら注意が必要です。
私が休学することで今の恵まれている環境に気づき「絶対に薬剤師になろう。就職はそのあと考えればよい。」と考えられたように、一度休学し学校外の世界や社会勉強をしてみるのも良いでしょう。

 

進路の変更を検討する

留年して再度、薬剤師になることを決心してもその後ストレートで卒業できるとは限りません。最悪の状況も考えておかなければなりません。薬学部以外への進路変更も検討するべきでしょう。
今の私なら、プログラミングの勉強をすると思います
なぜなら、薬剤師に比べると費用対効果が高いからです。また、今後確実に伸びてくる分野です。現在、エンジニアは不足していますので若いうちにプログラミングの知識を身につけておくと将来、薬剤師以上の収入や待遇を得ることも可能です。

 

 

進路の変更をしなくとも、時間に余裕があるのならば、薬剤師の勉強とは別にプログラミングの勉強をすることは有用だと感じています。現在、将来のキャリアや進路に悩みのある人はプログラミングスクールの無料カウンセリングで説明を聞いてみると良いでしょう。

 

私が社会に出て思うのは、薬剤師になってしまえば皆同じです。薬剤師国家試験に合格するかどうかはスタートラインにつけるかどうかを意味しています。
社会に出てからのキャリアを考えるならば、学力よりも「行動力」の方が何倍も重要です。

 

留年した経験を活かして活躍できる薬剤師になりましょう。

 

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